特集:中国語教育学会第16回全国大会報告
基調講演
外国語学習の科学
――第二言語習得論の中国語教育への示唆――
大会報告
身近な言語をもっと知ろう
――〇〇語は90分でここまでできる――
中国の街をドイツ語でお勧めしてみよう
――どこの街で,何ができるかを伝える―― 池谷尚美(横浜市立大学・非)
ラテンの乗りで友達の服をほめよう
――スペイン語を使って,人が身につけているものをほめる―― 落合佐枝(獨協大学・非)
ロシア語でロシア料理を注文しよう
――モスクワのロシア料理レストランでロシア料理を堪能する―― 福田知代(東京都立北園高等学校・非)
好きな有名人のことを話して友達を作ろう!
――身近な話題から相手を知る,自分を知ってもらう―― 押尾江里子(佼成学園女子中学高等学校)
日本手話を使ってカフェでの対話をしてみよう 松岡和美 小林信恵(慶応義塾大学)
「ハングル名刺」を作って韓国語で交換しよう 亀井みどり(上智大学・非)
大会報告
早稲田大学の外国語教育
――チュートリアル中国語・Tutorial English――
キーワード:外国語教育 中国語 英語 少人数制 チュートリアル
早稲田大学では現在20数種類の言語を正規科目として学ぶことができる。なかでも中国語と英語には力を入れており,2017年に竣工した外国語教育専用の教室棟で1クラス4,5名のチュートリアル授業を展開している。2018年6月2日に開催された中国語教育学会第16回全国大会では,早稲田大学の外国語教育について教育体制,教育内容等の紹介,外国語教育専用の教室棟の見学,チュートリアル中国語/英語模擬授業の参観を実施した。本稿では早稲田大学の外国語教育について,チュートリアル中国語を中心にその教育体制、教育内容等について紹介する。
論文
框式介词“从⋯⋯起/开始”中的隐现规律试探
キーワード:框式介词 前置项 后置项 隐现 制约
先行研究の多くは,“从”は時間的起点を表す場合単独では使用できず,“起”や“开始”と呼応して,「連語介詞」(“框式介词”)という形をとるべきであると主張している。ところが,多くの実例から,前項の“从”または後項の“起/开始”が省略されている現象がしばしば見られる。本稿は実例に基づいて,統語論,意味論および文体論などの面から,その前項または後項がどのような条件で省略できる/できないのかについての規則性を探る。さらに,その結論に基づいて,日本人中国語学習者が時間的起点を表す連語介詞“从……起/开始”を学習する際,前項の“从”よりも後項の“起/开始”および動詞の“开始”に注目すべきであると提案する。
日本語を母語とする中国語学習者のL2読解における付随的語彙学習
――10名の学習者のケーススタディ――
キーワード:付随的語彙学習 語彙習得 知識源 L2読解 think aloud
学习者一般在伴随性词汇学习的过程中,会自然地习得大量的二语词汇。本文借助二语习得研究中的词汇习得及词汇学习相关理论,对学习者在阅读中的伴随性词汇学习进行实证研究。我们以大学2年级与3年级的10名学生作为调查对象,运用词汇知识量表(VKS)与出声思考(think aloud)的方式,调查了学习者的词汇加工及伴随性词汇学习情况。针对学习者的个案,我们分析了学习者在阅读中的词汇习得过程,并考察了学习者使用的知识源及其使用频率,进而探讨日语母语的汉语学习者在词汇习得和词汇学习方面所受到的影响因素。最后我们也对如何培养学习者的自主学习能力相关问题进行了思考。
日本初级汉语教材中的典型动宾搭配考察
――从在日汉语教学视角出发――
キーワード:动宾搭配 词语搭配 教材语料库 现代汉语语料库
本稿では,より運用実態に即した動詞の導入方法を探るために,日本で出版して大学で使用されている初級中国語教科書にある「動詞+目的語」コロケーションを収集,調査し,母語話者の使用実態との比較を行った。調査の結果,次の三点の問題が明らかになった。第一,教科書の基本コロケーションの出現頻度は母語話者の使用より少ない。第二,教科書において母語話者がよく使うコロケーションを提示することは,これまでの中国語教育と補完し合うものと期待できるにもかかわらず,現行の教科書は母語話者の使用実態を十分に反映していない。特に,トピックに依存せず,広く使われているものを積極的に取り入れていない傾向がある。第三,新出単語を母語話者がよく使うコロケーションの形で提示する頻度が低く,母語話者があまり使わないコロケーションを取り上げる傾向も見られた。これらの問題点を指摘した上で,今後の教材制作や指導の改善点を提案する。
実践報告
基于大学生中文能力差异的小组合作学习策略与实践
キーワード:合作学习 个人负责能力 合作能力 问卷调查 总结
経済開発協力機構(OECD)は,2018年5月に『The Future of Education and Skills Education 2030』を発表し,2030年に向けて備えるべき3つのコンピテンシー,すなわち「新たな価値を創造する力」,「緊張やジレンマを解決する力」,「責任をもつ力」を明らかにした。上記のコンピテンシーを,我われを取り巻く現状という文脈において多角的に分析した結果,当該のコンピテンシーを備えるためには,「他人と協同する力」および「個人の責任能力」を涵養することが必要であるという結論が導かれた。このような経緯から,本稿では,異なる中国語運用能力を有する学生が学びの共同体を構築し,協同学習により実施した中国語での街頭アンケートについて報告を行う。また,学生の振り返りシートを用いて,活動の学習効果および改善点についても分析を加えた。
关于“能动学习”效果的实践研究
――以汉语初级班的教学活动为例――
キーワード:能动学习 参与 思考
学習者の能動性を向上させることを狙いに,アクティブ・ラーニングを取り入れた授業が年々増えている。しかし,先行調査の結果によると,アクティブ・ラーニングの役割に対する教員の高い期待と学習者の低い評価の間に大きなギャップがある。また,多くの学習者は「自分で調べて発表する演習形式の授業」より「教員が知識・技術を教える講義形式の授業」を希望している。それらの結果はアクティブ・ラーニングそのものが学習者のニーズに応えていないことを意味しているか,それともアクティブ・ラーニングの設計に問題があり,学習者の能動性を十分に発揮させることができなかったことを示唆しているのか。仮に後者である場合,アクティブ・ラーニングを取り入れた効果的な授業の開発をどうするべきか。本研究では,中国語教育の実践を通して,これらの問題の解明を試みた。