お申し込み期間:2022年2月9日(水) 22:59まで。
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日本語母語話者の中国語教育文法を考える ―応答表現をどう学ぶか(その2)―
本ワークショップは、2021年10月16日(土)開催のワークショップ「日本語母語話者の中国語教育文法を考える―応答表現をどう学ぶか―」での参加者との相互交流の結果、本研究グループで引き続き考察を継続しているものである。
前回のワークショップでは、「中国語初級学習者に必要な文法的、語用論的知識とは?―動詞を用いた“吗”疑問文に対する応答表現から考える―」というテーマ(発表者・中田聡美、指定討論者・建石始)のもとで、中国語の“吗”疑問文に適切に応答することが学習者にとってさほど容易ではないことを論じた。
本ワークショップでは、疑問詞疑問文に対する応答表現をとりあげ、中国語初級の学習対象となっている文法事項およびその表現形式について、対人コミュニケーションを意識した場合にどのような問題が生じ得るか考えたい。また、学習者の母語に対する理解も教授者にとって不可欠であるため、日本語の「そうです」を事例に、日本語応答表現の使用実態についてもふりかえりたい。
プログラム
14:00ー14:05
趣旨説明 [鈴木慶夏(神奈川大学)]
14:05ー14:35
発表1「語用論的角度からみた疑問詞疑問文に対する応答表現―中国語初級学習者に教えるべき表現とは―」[西香織(明治学院大学)]
14:40ー15:10
発表2「応答表現『そうです』の使用実態について」[建石始(神戸女学院大学)]
15:15ー15:40
質疑応答・ディスカッション
発表1
「語用論的角度からみた疑問詞疑問文に対する応答表現―中国語初級学習者に教えるべき表現とは―」西香織(明治学院大学)
要旨
疑問詞疑問文を導入する際、文法を教えることを念頭に置いていると、その応答表現もしばしばフルセンテンスで提示される。しかし、そのフルセンテンスによる応答は、時として非常に冗長であり、初級学習者がアウトプットをする際の負担になりうるのと同時に、中国語の会話として不自然さを与えることがある。逆に、日本語を母語とする学習者が、省略の多い日本語の運用を中国語にあてはめ、必要な要素まで省略して名詞のみで応答し、負の語用論的転移を起こすこともある。
(1) 問:你住在哪儿?
答:我住在东京。/住在东京。/住东京。/在东京。/东京。
(2) 問:你喜欢什么季节?
答:我比较喜欢夏天。/我喜欢夏天。/喜欢夏天。/夏天。
省略は一見、文法レベルの問題に見えるが、省略の仕方によっては、敬意を示すべき目上の相手に対して礼を失することになるなど、コミュニケーション上、深刻な問題を引き起こしかねない。
本ワークショップでは、語用論的な問題に焦点をあてて、コミュニケーションの観点から、初級レベルで疑問詞疑問文に対する応答をどのように教えるのが良いかを共に考えたい。
発表2
「応答表現『そうです』の使用実態について」建石始(神戸女学院大学)
要旨
中国語の応答表現“对”“是的”“是啊”などに対応する日本語の応答表現として「そうです」が挙げられる。日本語の応答表現「そうです」は述語が「名詞+だ」の場合に限られるとされている。
(1)山田:田中さんは大学生ですか。
田中:○はい,そうです。 ○いいえ,ちがいます。
○はい,大学生です。 ○いいえ,大学生ではありません。
(2)山田:田中さんは忙しいですか。
田中:×はい,そうです。 ×いいえ,ちがいます。
○はい,忙しいです。 ○いいえ,忙しくありません。
(3)山田:田中さんは朝6時に起きますか。
田中:×はい,そうです。 ×いいえ,ちがいます。
○はい,起きます。 ○いいえ,(6時には)起きません。
((1)~(3)はいずれも庵他2000: 280)
真偽疑問文のうち,「はい,そうです」や「いいえ,ちがいます。/そうではありません。」で答えることができるのは,(1)のように述語が「名詞+だ」の場合に限られ,(2)のような述語が形容詞の場合,(3)のような述語が動詞の場合は述語を繰り返す必要があるとされている。では,上記の使い分けは実際にどこまで有効なのだろうか。
本ワークショップでは,複数のコーパスを参照しながら,日本語の応答表現「そうです」の使用実態を探っていきたい。